2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧
十二月詩神の泳ぐ金魚鉢黙契のごとき一本冬ざくら逝く年の貌を洗つてゐたりけり大年の無口な街の底にをり冬銀河路地の彼方にコタンあり
着ぶくれて阿吽の真中通りけり詩神ゐてわたしの中の声冴ゆる遣隋使聞いてゐさうな虎落笛はるかなるものの声降る聖夜かな最終のバス方舟となる聖夜
蜉蝣やおまへにもある生きる意味白露やなんと寂しいお前の忌補陀落の光の奥へ鳥渡る色鳥の好む漢を止めにけり愛あればつつしみて佇つ秋夕焼
澄みきつて水の底ひにゐる他人本牧の夜はジャズ流れ八月尽 聖堂の黒き秋暑の木椅子あり月白や棚田は天につながりぬ色鳥やカルメンマキとすれ違ふ
蝉しぐれその日嗚咽でありにけり八月の蹉跌新宿三光町訛強き漢がふたり酔芙蓉たましひの腰かけてゐる曼殊沙華呆けたる母を抱きて髪洗ふ
東京の底にある海五月闇ダンディズムとはもののふのパナマ帽変身の淋しき象よ敗戦日陰陽の石祀られて天の川銀漢や釈迦の孤独を生きてをり
ひた走る水の声あり夏木立 終止符を打ち忘れたる桜桃忌父の日やもういいだらうの独白石なげて投げて暮れゐる夏河原キス好きな子の弄ぶ枇杷の種